2016年10月3日

代表とする疾患

変形性股関節症へんけいせいこかんせつしょう

 関節軟骨の退行性変化(変性や破壊)に始まり、様々な関節変化が進行する疾患です。軟骨の変性・破壊は、人種、性別、加齢、肥満および遺伝などの素因下に、機械的負荷(活動性・運動、外傷、職業など)が加わり発生します。さらに機械的負荷により、軟骨細胞の代謝障害が起き軟骨破壊が進行し、滑膜炎、関節水腫、骨破壊の進行を引き起こします。この病変は進行性であり、それぞれの時期に応じた臨床像を呈します。
骨盤の臼蓋(きゅうがい)部分と大腿骨頭(こっとう)部分が変形します。
変形性股関節症
変形性股関節症には一次性と二次性に分類されます。
一次性では、明らかな原因疾患なしに股関節が変形したり、軟骨が擦り減ったりします。股関節本来の構造上の異常がありません(10~15%)。
二次性では、股関節に構造上の欠陥があり、それに続発するものです。我が国では、発育性股関節形成不全:先天性股関節脱臼(生まれつき股関節が脱臼している)と寛骨臼(臼蓋)形成不全(股関節の屋根の部分の発育不良)に続発するものが大半を占めます(85~90%)。
この負担がかかりやすい構造となっている股関節に年齢を重ねるうちに、徐々に軟骨がすり減ってしまい、変形、痛み、炎症が起こります。

先天性股関節脱臼、寛骨臼(臼蓋)形成不全せんてんせいこかんせつだっきゅう、かんこつきゅう(きゅうがい)けいせいふぜん

 先天性股関節脱臼と寛骨臼(臼蓋)形成不全は別のものではなく、大きくはひとくくりの疾患です。寛骨臼形成不全が背景にあって、脱臼が生じてしまうこともあります。生まれながらに外れたり戻ったりしている場合もあれば、生まれた時には外れていなくても乳児期に外れてしまう場合もあります。そういうことで現在では、両方を合わせて「発育性股関節形成不全」と呼ぶようになりました。疾患の傾向として女児に多く、(男女比:2対8)しばしば同一家系内に頻発します。

先天性股関節脱臼、寛骨臼(臼蓋)形成不全

 変形性股関節症の8割が女性なのですが、その原因として寛骨臼形成不全といって股関節の屋根の被りが浅くなる状態があります。屋根が切り立った感じになっていて被りが浅い状態です。そのため、荷重が一点にかかり、股関節が不安定になります。若いうちは何とか持ちこたえるのですが、筋力が落ち、体重が増えてしまうと、軟骨がすり減り、やがて変形性股関節症に至るということが多くなります。
寛骨臼形成不全

大腿骨頭壊死症だいたいこっとうえししょう

 大腿骨頭壊死症は、骨頭が壊死することで、やがては潰れて痛みが出る病気です。骨頭への血流が途絶して、骨頭が壊死してしまう病態ですが、どうしてそうなるかというメカニズムに関しては、詳しくはわかっていません。外傷や感染、放射線治療などいろいろな原因により起こりますが、一番多いのが特発性大腿骨頭壊死症です。これは国の難病に指定されています。
大腿骨頭壊死症

 特発性大腿骨頭壊死症になりやすい要因として、大きく2つが挙げられます。
まずはお酒の飲み過ぎによるものと、もうひとつはステロイドの服用によるものです。ステロイドはいろいろな病気に使う薬ですが、これを大量に服用、あるいは投与された場合に発生することがあります。もちろん、誰にでも起こるわけではなく、ごく一部の方に対してです。
また、それ以外にも基礎疾患によるものもあります。例えば、全身性エリテマトーデス(自己免疫疾患で膠原病の一種)という病気の方はステロイドを服用、投与されることで大腿骨頭壊死症が発生しやすいと言われています。
左THA