手術の選択肢について
寛骨臼回転骨切り術(RAO)かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ
寛骨臼形成不全に対し、股関節の浅い屋根を作る手術法として寛骨臼回転骨切り術があります。寛骨臼回転骨切り術(RAO)は、浅い屋根になっている寛骨臼(骨盤)をくりぬいて回転させ、本来の軟骨を持った屋根を作ることが出来、解剖学的に正常に近い股関節を作ることが出来ます。
浅い屋根をくりぬき回転させた寛骨臼が骨頭を充分に覆うことにより、荷重域(体重のかかる部分)が拡大します。これにより一部分(臼蓋縁)にかかっていた荷重が、均等にかかるようになります(荷重の分散)。また、臼蓋の荷重面が水平になるため、骨頭が外に出て行く力がなくなります(剪力の消失)。
手術の適応としては、まだ軟骨が残っていて股関節に変形が少ない40歳代までが対象となります。

両側同時人工股関節置換術りょうそくどうじじんこうこかんせつしゅじゅつ
両側同時の手術は、患者さんが横向きに寝た状態で行います。片側の手術が終わると、いったん仰向けになりレントゲンを撮ります。同時に脚長差をはかり、もう一方の脚の長さをどこまで伸ばすかを決めます。それから今度は反対の横向きになり、もう一方の手術を行います。麻酔がかかっている時間は、股関節の変形の度合いにもよりますが、3時間~4時間前後となります。手術自体の実際にかかる時間は、2時間15分~3時間程度です。
人工股関節の構造について

当センターでは、主に下図にある5社の人工股関節を使用しており、患者さんそれぞれに一番適合した人工股関節を選択し、使用しています。
後側方アプローチ
人工股関節の手術では、股関節に到達するまでの進入方法(アプローチ)がいくつかありますが、私は人工股関節を設置するところの術野を確保できる股関節の後側方から進入する方法で行っています。後側方アプローチは筋肉を切らない前方系のアプローチに比べると脱臼率が高いといわれているのですが、一旦、切離した関節包や短外旋筋群を修復することで、前方系のアプローチと比較しても脱臼率には差はないと報告されています。また、肝心の術野を展開しやすく、インプラントを正確な位置と角度に設置できます。手術後、脱臼しやすい動作を避けていただくように指導している施設もありますが、当院では後方軟部組織(関節包、短外旋筋)を修復し、安定性を十分に確認することで、脱臼を回避しておりますので、特に何も動作制限は行っておりません。
