2016年9月30日

センター長ご挨拶

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股関節痛でお困りの患者さんへ

股関節に痛みや変形が生じると、日常生活動作の中で最も基本的な行動である“歩く”という動作が制限されます。股関節というのは痛みが強いと、本当に日常生活が不都合になってしまいます。ADL(エーディーエル:日常生活動作 Activities of Daily Livingの略)がとたんに低下してしまいます。股関節痛に対してどこで治療したらよいか分からず、治療に消極的になってしまったり、諦めてしまったり、手術して余計に歩けなくなってしまうのでは・・・という不安を感じている方は、実際たくさんおられると思います。しかし現在の医療はとても進歩しており、股関節の痛みを我慢しておられる方の不安を取り去ってあげて、治療することで少しでも早く痛みから解放することが可能です。

診察で一番心がけていることは、患者さんがいま一番お困りになっている状態の把握です。患者さんにはそれぞれ、お仕事をされている方、子育て中の方、お孫さんの面倒を見ている方・・・いろいろな年齢層、ライフスタイルの方がいらっしゃいます。それぞれの患者さんから十分お話しをお伺いして、患者さんが望まれることを実現できる治療方針を、さまざまな選択肢から決めていき、できるだけ患者さんのニーズに合った治療ができるように心がけています。

股関節の治療には保存的治療(薬物療法、理学療法や装具療法)から手術(人工関節手術、骨切り術)まで様々な治療法があります。
保存的治療の効果が望めなくなり、疼痛、関節可動域制限や歩行障害によりADLに支障を生じている場合は、患者さんと治療方法についてご相談の上、手術のご希望があれば、手術を検討します。人工股関節や骨切り術により、痛みを軽減させて股関節機能を高めることで、歩行ができるようになります。そうすることで、ADLが向上し、生活の質も改善していくことが期待されます。
また、手術をする場合、片側だけに変形がある患者さんと両側に変形がある患者様がいらっしゃいます。両側に変形がある患者さんで1回の手術で両側ともに手術をしてほしいと希望される患者様がいらっしゃいます。手術には患者様それぞれに最適な時期があります。それは患者さんの年齢や全身状態、仕事や家庭の都合などによって異なりますが、2回に分けての手術を計画するよりも、1回で確実に手術が行える両側同時人工股関節置換術が適している場合もあります。

近年、人工関節の性能も良くなっています。動きの範囲(可動域)が大きくて脱臼しにくく、摩耗に強くて長期にわたって良好な成績を望めるものもあり、1回の手術で一生持つこともあります。ですから、両側変形性股関節症や両側大腿骨頭壊死症の患者さんで、比較的年齢の若い方でも、活動性が高く仕事や日常生活で困っている方には、両側同時人工股関節置換術という選択肢も必要と考えています。実際に、仕事で何度も休みが取れない方や育児で忙しい方に両側同時手術の話をすると、ほとんどの患者さんが手術を希望されます。
当院では、人工股関節置換術を受ける患者さんの内、約2~3割が両側同時人工股関節置換術を希望して、手術を受けられています。そして、当院の両側同時人工股関節置換術の手術件数は、全国でもトップクラスと自負しております。

両側同時人工股関節置換術はどこの病院でも行っているわけではありません。また、患者さんによっては手術に抵抗がある方もいます。その場合は、片側の手術から行い、もう一方の股関節の様子をみるのも一つの方法です。片側のみの手術をするか、2回に分けて手術をするか、両側同時に手術をするか、患者さん自身によって選ぶことができます。
当院で手術した患者さんは術後、「一般的にしてはいけない姿勢や動作の制限」は原則設けていません。今まで出来ていたことは一切、制限なく安心して過ごしていただけるように、手術は最新の技術と工夫を凝らし、最善・最良の治療を提供させていただいております。

私は手術後に外来に来られた患者さんが、人工股関節であることを忘れて好きなことをして過ごしている、というような手術を目指しています。そして、患者さんが治療を受けて良かったと思える手術の時期を見極めることも医師の大きな役割と考えています。

股関節の痛みや不自由な生活を我慢している患者さんはとても多いです。特に股関節はもっとも負担がかかる関節のため、時には痛み止めや杖を使っても思うように痛みが軽減しないことあります。どんなに小さな手術でも安全とは言い切れませんが、あまり我慢しすぎないで専門医を受診し、さまざまな治療法を知っていただきたいと思います。患者さんが股関節の手術をしたことを忘れてしまうくらいの手術をして、患者さんに笑顔を取り戻してあげたいと常に思っています。

平成28年11月1日
人工関節センター長 佐藤 貴久

佐藤 貴久(さとう たかひさ)プロフィール

経歴

  • 1998年   山形大学医学部卒業
  • 1998年   群馬大学整形外科 入局
  • 2003年   伊勢崎市民病院
  • 2004年   群馬大学整形外科 医員
  • 2006年   群馬大学整形外科 助教
  • 2012年   群馬大学整形外科 部内講師
  • 2013年   公立富岡総合病院 整形外科医長
  • 2016年4月~ 善衆会病院 整形外科部長 兼 人工関節センター長
  • 2017年4月~ 善衆会病院 診療部長 兼 人工関節センター長
  • 2021年4月~ 善衆会病院 副院長 兼 人工関節センター長

所属学会

  • 日本整形外科学会 専門医
  • 日本股関節学会 評議員
  • 日本人工関節学会 評議員
  • 日本人工関節学会 認定医
  • 東日本整形災害外科学会
  • 関東整形災害外科学会
  • 日本小児股関節研究会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 関東股関節懇話会 幹事

手術症例数(執刀症例のみ)

伊勢崎市民病院(2003年4月~2004年3月)

  • 人工股関節全置換術:35例
  • RAO(寛骨臼回転骨切り術):8例

群馬大学医学部附属病院(2004年4月~2013年3月)

  • 人工股関節全置換術:321例
  • 人工股関節再置換術:29例
  • RAO(寛骨臼回転骨切り術):10例

公立富岡総合病院(2013年4月~2016年3月)

  • 人工股関節全置換術:243例
  • 人工股関節再置換術:21例
  • RAO(寛骨臼回転骨切り術):2例

善衆会病院(平成28年度/2016年4月~2017年3月)

  • 人工股関節全置換術:114例(内、両側人工股関節全置換術は16件:32例)
  • 人工股関節再置換術:10例
  • RAO(寛骨臼回転骨切り術):2例

善衆会病院(平成29年度/2017年4月1日~2018年3月31日)

  • 人工股関節全置換術:255例(内、両側人工股関節全置換術は73件:146例)
  • 人工股関節再置換術:11例
  • RAO(寛骨臼回転骨切り術):2例

善衆会病院(平成30年度/2018年4月1日~2019年3月31日)

  • 人工股関節全置換術:298例(内、両側人工股関節全置換術は75件:150例)
  • 人工股関節再置換術:6例

善衆会病院(令和1年度/2019年4月1日~2020年3月31日)

  • 人工股関節全置換術:330例(内、両側人工股関節全置換術は105件:210例)
  • 人工股関節再置換術:4例

善衆会病院(令和2年度/2020年4月1日~2021年3月31日)

  • 人工股関節全置換術:339例(内、両側人工股関節全置換術は102件:204例)
  • 人工股関節再置換術:4例

善衆会病院(令和3年度/2021年4月1日~2022年3月31日)

  • 人工股関節全置換術:374例(内、両側人工股関節全置換術は108件:216例)
  • 人工股関節再置換術:5例

善衆会病院(令和4年度/2022年4月1日~2023年3月31日)

  • 人工股関節全置換術:435例(内、両側人工股関節全置換術は110件:220例)
  • 人工股関節再置換術:7例

インタビュー記事

スタッフ紹介

麻酔科医 症例ごとに安全かつ正確な麻酔を提供し、術前・術中・術後を通して、患者さんにストレスを与えない麻酔を心がけています。また、手術室スタッフの協力、執刀する佐藤医師との連携が必要であり、しっかりとした体制を取っていきます。

手術室看護師 患者さんに不安を感じさせず、安心・安全且つより高いレベルで手術が実践されるように管理することを目標とし、執刀医、麻酔科医との連携に努めます。

病棟看護師 患者さんの望むゴールから看護計画を立案して退院後の生活を見据えた看護実践を行っております。日常生活動作からどのような援助が必要かをカンファレスで話し合い、患者さんの立場に立った看護を行い、満足と信頼が得られるように努めていきます。

理学療法士 患者さんと目標を共有し、それを達成できるように、身体だけでなく、精神面もサポートし、充実したリハビリテーションを提供します。具体的には、関節可動域訓練や筋力強化、立つ・歩くなどの基本動作練習を行い、円滑な自宅復帰の支援を行っています。

作業療法士 着替えや排泄、掃除などといった日常生活を送る上で必要になる動作をより効率的・円滑に行えるように、動作練習等を行います。また、患者さん一人一人に向き合い、精神面のサポートをしながら、その人らしくより良い生活が過せるよう支援していきます。

医療ソーシャルワーカー 社会福祉制度、社会保障制度に関する各種相談や疾病におけるさまざまなご相談に医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)や看護師、臨床心理士が対応いたします。